- シリーズ13回目
<国際手話とは> - シリーズ12回目
<自然言語とは> - シリーズ11回目
<学習の転移とは その2> - シリーズ10回目
<学習の転移とは その1> - シリーズ9回目
<日本手話の「生活言語」と「学習言語」> - シリーズ8回目
<生活言語と学習言語> - シリーズ7回目
<ろう児をバイリンガルに育てるには> - シリーズ6回目
<ろう児はどうしてバイリンガルになる必要があるのか> - シリーズ5回目
<聞こえるこどもの第一言語習得> - シリーズ4回目
<第一言語と第二言語> - シリーズ3回目
<ろう児の第一言語獲得> - シリーズ2回目
<母語と母国語> - シリーズ1回目
<バイリンガルろう教育の概要> - ごあいさつ
シリーズ13回目 <国際手話とは>
前回は国際補助語として作られた人工的な国際語、エスペラントのお話をしました。
では、手話の世界にもそのような共通語があるのでしょうか?「国際手話」(IS)と呼ばれるものがあります。これは国際会議などでいろいろな国のろう者が集まった時に、何日かすると自然にお互いが理解できるようになる、といった特徴を利用したものです。
以前、世界ろう連盟はジェスチューノという共通語を作ろうとしたことがありますが、それはうまく行きませんでした。今では世界ろう連盟も各国の手話を尊重する、という大前提の上に、異なるろう者が集まると自然に通じ会えるようになるという手話の特徴を生かした「国際手話」を国際会議などでは使っていこうという考えです。
例えば、会議でたくさんのろう者が知っているからといって、アメリカ手話(ASL)を使うとアメリカのろう者に有利になってしまうかもしれません。ですから、だれも母語として使っていないことばを選ぼう、そうすればみな平等な立場にたてるから、ということでもあります。
私の個人的な経験をお話しましょう。以前、北欧にバイリンガル教育の調査に行きました。その時、バイリンガル教育を受けて、大人になった若いデンマーク人ろう者をインタビューしました。彼女ができるのはデンマーク手話とイギリス手話。私がわかるのは日本手話とアメリカ手話です。さあ、どうしましょう。国際手話でやろうということになりました。
国際手話でインタビューを終え、帰国後にそれを彼女に送って内容をチェックしてもらうことになりました。国際手話を日本手話に訳して、もう一人の日本人ろう者に伝え、それを日本語で書いてもらいました。次に書かれた日本語を日本人聴者が英語に訳して、彼女に送りました。国際手話→日本手話→書記日本語→書記英語と4つのことばを経て彼女にメールが届いたわけです。そして、それを見た彼女の感想は、「国際手話って意外と細かいところまで、正確に伝わるものなのね!」でした。
手話にはCLと呼ばれる、ものの形や動きをそのまま手で表したような表現があります。手話の中にはCLとそれが固定化してできた「単語」<フローズン語彙>の2つの領域があり、ろう者はいつもその2つの世界を行ったり来たりして表現しています。知らない国の人と話すときにはCLをたくさん使います。ジェスチャーのようなものかと思うかもしれませんが、CLにはルールがあります。たとえば、遠い/近いや重い/軽いなどの区別はろう者であれば、世界中どこのろう者でも同じように理解できます。手話にはCLがあるので、ろう者同士では自然に理解しあえる部分が多いのです。



