- シリーズ13回目
<国際手話とは> - シリーズ12回目
<自然言語とは> - シリーズ11回目
<学習の転移とは その2> - シリーズ10回目
<学習の転移とは その1> - シリーズ9回目
<日本手話の「生活言語」と「学習言語」> - シリーズ8回目
<生活言語と学習言語> - シリーズ7回目
<ろう児をバイリンガルに育てるには> - シリーズ6回目
<ろう児はどうしてバイリンガルになる必要があるのか> - シリーズ5回目
<聞こえるこどもの第一言語習得> - シリーズ4回目
<第一言語と第二言語> - シリーズ3回目
<ろう児の第一言語獲得> - シリーズ2回目
<母語と母国語> - シリーズ1回目
<バイリンガルろう教育の概要> - ごあいさつ
シリーズ5回目 <聞こえるこどもの第一言語習得>
聞こえる子どもを育てているろうのお母さんもいるでしょうから、ここで、ちょっと聞こえる子どもの第一言語習得について、お話ししたいと思います。
人がことばを話せるようになるためには、そのための道具がそろい、それを自由に操れるようにならなくてはなりません。つまり、歯が生え、硬いものが飲み込め、舌を上手に使って食べ物を肺ではなく、胃に送り込めるような段階になっていないと、 とてもできません。
吐く息を自分でちゃんとコントロールできなくてはなりません。大方の場合1歳前後で、初語(しょご)がでます。それが「パパ」か「ママ」か、あるいは「バアバ」か?大問題です。「ジイジ」は歯がしっかりしていなくてはならず、かなり難しい発音です。
しかし、初語の前に赤ちゃんは「あーうー」だの、「ばーぶー」だのさかんに喃語(なんご)を発しています。自分で発音練習をしているのです。聞こえない赤ちゃんには手話の喃語があります。口の中の細かい筋肉をコントロールするより、大まかな手の動きをコントロールすることのほうが早くできるようになるので、声の喃語より手の喃語の方が先に出ます。
早い時期には聞こえる赤ちゃんも聞こえない赤ちゃんも同じように手で喃語を話していますが、聞こえる赤ちゃんは声で話せるようになると手の喃語は減り、そのうち声だけで話すようになります。
言語発達は大変個人差が大きいのですが、1歳で「わんわん」「ママ」などの意味のあることば、2歳で2語文(「バナナあった」など)、4歳で助詞を使う(「ふくろのおかしちょうだい」など)ことができるようになっていくというのが大まかな目安です。
『サザエさん』のアニメにでてくるイクラちゃんのせりふは「ばーぶー」と「ちゃん」しかないそうです。それで、怒ってみたり、甘えてみたり、欲しいものを手に入れたり、拒否したり、なんでもやってしまいます。聞く人は声の大小や声の調子で、何を言いたいのか判断しているのですね。
しかし、これを口型の読み取りだけでやろうとしたらどうでしょう。有名な「タマゴ」と「タバコ」の例を出すまでもなく、みんな「ばーぶー」です。
また、日本語には声の高い・低いによって異なる意味になる「アクセント」があります。雨と飴は「あ↘め」か「あ↗め」かで区別されます。
ただ、それは音声日本語の場合で、書きことばになってしまえばアクセントは関係ないし、「雨」と「飴」のように漢字を使うことでさらに視覚的な違いを際立たせることもできます。
音声言語では「バナナあった↗」と「バナナあった↘」ではまったく別の意味になります。書きことばにする場合には、「?」をつけたり、「バナナはありましたか。」のように疑問詞をつけたりしますが、話しことばに必ずついてくるイントネーションは目で見ることはできません。
つまり、音声言語は耳で聞いて理解されるようにできていますが、それを書いた場合には、音の情報(アクセントやイントネーション)は一緒については来ず、落ちることになります。だったら、聞こえない子でも書きことばの日本語ならOKですよね。



