- シリーズ13回目
<国際手話とは> - シリーズ12回目
<自然言語とは> - シリーズ11回目
<学習の転移とは その2> - シリーズ10回目
<学習の転移とは その1> - シリーズ9回目
<日本手話の「生活言語」と「学習言語」> - シリーズ8回目
<生活言語と学習言語> - シリーズ7回目
<ろう児をバイリンガルに育てるには> - シリーズ6回目
<ろう児はどうしてバイリンガルになる必要があるのか> - シリーズ5回目
<聞こえるこどもの第一言語習得> - シリーズ4回目
<第一言語と第二言語> - シリーズ3回目
<ろう児の第一言語獲得> - シリーズ2回目
<母語と母国語> - シリーズ1回目
<バイリンガルろう教育の概要> - ごあいさつ
シリーズ8回目 <生活言語と学習言語>
第2言語を習得する場合に、わたしたちは通常2つの違うタイプの言語能力を身につける必要があります。「遊び場言語」と「教室言語」と呼ばれることもありますが、「生活言語(BICS)」と「学習言語(CALP)」という言い方がよく使われます。いわゆる日常会話で使う言語と高度な思考や論理的な分析に使う言語の能力は違うものです。
皆さんの中にも、外国で英語で買い物をしたり、道を聞いたりするくらいの日常会話レベルなら何とかこなせるけれど、政治や経済の議論をするのは難しいという人は多いでしょう。
よく英語圏に行った海外駐在員の子どもはすぐに友達もできて、学校にも慣れ、瞬く間に英語がうまくなっていくのに、家にいるお母さんはちっとも英語がうまくならなくて、子どもに通訳してもらうことが多いなどという話を聞くことがあります。
しかし、本当にそうでしょうか?遊びの場面のように、人と人が面と向かって話すときに使う言語では、場面や相手の表情、体の動きなどと言った言語以外の情報がたくさんあるのです。このことを周りの状況(コンテキスト)に頼っている、といいます。それが「生活言語」、日常会話の世界です。
ところが、学校の教室で使われる言語、数学とか社会とかの教科の指導に使われる言語は、遊び場の言語とは違います。思考をするときなどに使う高度な言語になります。分析、推理、評価などといった作業を行う時に必要となる言語です。話している相手が必ず目の前にいるとは限りません。ですから、言語以外に頼れる情報はありません。このことをコンテキストが少ない、と言います。つまり認知的に高度な、言語そのものの知識が必要なのです。この学習言語を獲得していることが、教科の学習を進めていく上で大変重要になります。
駐在員の子どもの多くは2~3年で日常会話はかなりできるようになるようですが、学習言語はなかなか母語話者なみにはならないようです。大人は子どもの見かけの流暢さに惑わされてしまいますが、言語習得には長い時間が必要なのです。



