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《学習の転移とは その2》

 

「光合成」のはなしの続きをもう少しさせてください。

別に「光合成」が大好き、というわけではないのですが、この「合成」という考え方は重要な概念なのでもう少し続けます。

さて、「光合成」が十分理解できたら、普通、動物が呼吸をして酸素を使って二酸化酸素を出すのとは全く逆の働きだということにも気づくことができるでしょう。緑の植物が減ったら、酸素ができない、二酸化炭素が多くなって温暖化も進む、などということもみな繋がっていることがわかるでしょう。

そのような地球規模の問題についても、ろう児が深く理解し、自分の考えを持って、それを自由に発表し、議論できる仲間がいる、そういう環境と教育が必要ではないでしょうか。ろう児にとってそれができるのは、教育がすべて手話で行われ、手話で語れる仲間がいる環境です。

それがあれば、ろう児の学習と聴児の学習は特に変わるところはありません。

手話で教育すれば、すべてのろう児がものすごく賢くなる、というわけではありません。聴の子どもの中に賢い子どもとそうでない子どもがいるように、ろう児の中にも同じようなバラつきが当然あります。しかし、十分な教育機会が与えられなければ、子どもの能力を最大限に引き出すことはできません。

さて、「合成」ですが、これは1年生の算数の中でも重要な概念です。たとえば、5は1と4から「合成」されています。また、2と3、3と2、4と1からも合成されます。逆に5は1と4に「分解」することもできます。10までの数で繰り上がりや繰り下がりのない計算は,「合成・分解」を式の形に表したものといえます。つまり「合成・分解」はすべての計算力の基礎になります。今、昔苦手だった「因数分解」などということばが頭をよぎりませんでしたか?それを全部外国語で勉強しなくてはならないとしたら・・・。恐ろしいことです。せめてろう児には手話で説明してあげようではありませんか。