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《ろう児はどうしてバイリンガルになる必要があるのか》

 

ろう児にはどうして2つの言語が必要なのでしょうか?

第一言語、第二言語というお話をしてきました。ろう児はどうして手話という第一言語だけでは足りないのでしょうか?

どうして日本語を学ばなくてはいけないのでしょうか?手話が劣った言語で、日本語が優れた言語だからでしょうか?

手話は歴史も浅く、まだまだ発展途上で進んだ科学技術や複雑な概念などを表わすことができないからでしょうか?それは違います。

手話は音声言語と比べて劣った言語ではありません。アメリカでは手話で学位がとれる大学や大学院があります。フィンランドでは手話で博士号を取った人もいます。「それは外国の手話の話で日本手話はそうではない」という人がいるかもしれません。

しかし、日本でも手話ニュースがあることを思い出して下さい。政治、経済、科学技術など、さまざまな話題に関するニュースが手話で放送されています。ということは、日本手話でも、普通の大人がニュースで見聞きするようなことは何の不都合もなく語ることができるということです。

ろうの子どもは1000人に、およそ1人の割合で生まれます。つまり圧倒的な少数派(マイノリティ)です。駅の名前、テレビといった生活環境には日本語があふれ、また学校に入れば教科書は全部日本語で書いてあります。

つまり、日本人として日本の教育を受けて成長していくためには、日本語はどうしても必要です。また、手話を知らない聴者(日本語モノリンガル)が圧倒的に多いわけですから、ろう者だけ(手話モノリンガル)だと話が通じません。

そこで少数派であるろう者が多数派言語である日本語も覚えてバイリンガルになり、日本語でコミュニケーションをとることが必要になってくるのです。

しかし、その日本語は音声を使う日本語でなくてもいいのです。読めて、書ければ筆談ができます。字幕やパソコン筆記が読めるし、インターネットで情報を取ることができます。

もしろう者が多数派で聴者が少数派だったら、バイリンガルにならなくてはならないのは聴者でしょう。でも、ろう者の方が少ないので、バイリンガルにならないと不便だという負担はろう者が負っています。その結果バイリンガルになれば、いいこともあります。

例えば、日本人で日本語だけしかできない人と、英語もできる人のことを考えてください。英語ができた方が便利ですよね。それと同じで言語が1つだけしかできない場合と2つできる場合では世界の広がりが違います。手に入れられる情報が違います。2つの文化がわかります。得なことがいろいろあるわけですから、ぜひバイリンガルをめざしましょう。