バイリンガル・バイカルチュラルろう教育とは?

バイリンガルろう教育のすすめ

バイリンガルろう教育とは、日本の場合で言えば「日本手話と書記日本語(読み書き)」という二つの言語を使ってろう児を教育することです。日本手話は、ろう児の母語となりうる唯一の言語で、すべてのろう児が自然に容易に確実に身につけることができます。

人工内耳をすれば、聞こえる子どもと同じように地域の学校ですべての学習ができるようになるでしょうか。人工内耳の手術ができる時期(現時点では1歳前後)になるまでの間にも、大きなロスタイムがあります。その間に、聞こえる子どもはどんどん聞きためていって、1歳を過ぎるころには話し出すようになります。人工内耳の手術をした後にも、聞くための辛抱強い訓練が必要になります。人はすべて言語を習得する能力を持っていると言われ、それは訓練で身につけるものではありません。

ろう児が母語として自然に身につけることができる日本手話で、すべての教育活動を行うことで、子どもたちの概念、理解力・言語力・思考力・学力が年齢相応に発達します。日本手話は第二言語である日本語に直結するわけではありません。家庭内で両親が別々の言語で話していたために、自然に2つの言語を身につけるバイリンガルもいることはいますが、通常第二言語には学習が必要です。概念や思考などを養う上では確かな母語が必要不可欠です。バイリンガルろう教育は、日本手話と日本語だけを学ぶものではなく、その2つの言語を使って算数や理科や社会、英語といった教科を学ぶとともに、教室内での話し合い、遊び、課外活動やさまざまな行事を通して、聞こえる子どもが聞こえる学校で学び、経験するすべてを身につけていきます。

バイカルチュラルろう教育のすすめ

ろう者と聴者(聞こえる人)は異なる価値観や文化をそれぞれ無意識に身につけています。
自分の文化とは違うところがあっても、それはお互いに尊重しあう必要があります。
例えば、使っている言葉、呼びかける方法、情報の取り込み方、どんなことを失礼だと思うか、どんな芸術やスポーツを好むか、認知や思考のスタイルなどにも違いがあります。

ろう者は目と目が合っていないとコミュニケーションが取れないので、相手の注意を引くために手を振って呼んだり、電気を点滅されるなどということは既にご存じの方も多いかもしれません。また、初対面の時に、出身地、出身校や年齢を聞くというのはよく行われることで、失礼だとは思われません。ろう学校出身者で、出身校が同じであれば、先生や多くの先輩・後輩に共通の知人がいるでしょう。これは絶対敬語(年齢差が敬語の必要性を決める)を使うことが一般的な韓国語話者は相手に年齢を聞くことが失礼ではないというのと似ているところがあるかもしれません。また、ろう者は目に見えることはストレートに言うという文化があるため、久しぶりにあった人に「太ったね」と言われたり、かわいくないと思っている赤ちゃんに対しては「かわいいね」と言わない、など赤ちゃんに対しては「かわいいね」ということが習慣的に行われる聴者の文化とはずいぶん違うかも知れません。サインネームと言われる手話の呼び名も、ほくろや髪型など顔の特徴を表すものが多いのです。

このような違いを知ることで、ろう児はろう者としてのアイデンティティを高めることができ、聴者中心の社会で自分を見失うことなく歩いて行くことができるのです。 

明晴学園は私立学校として認可されているバイリンガルろう学校です。
明晴学園

以下の文科省のサイトもぜひご覧ください。
文部科学省【特定非営利活動法人 バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター】